動画の中には、映像と音声が合っていない状態になっているものがあり、視聴していて不快な思いをすることがあります。しかし、実際にはこの音ズレを補正して正常な状態に自分で戻すことも可能です。こちらの記事では、動画の音ズレとはどのような状態なのか、その原因や補正する方法、便利なツールなどについて見ていきます。
動画の音ズレとは?
動画の音ズレとは、映像の後にわずかに遅れて音声が流れる現象です。これは動画共有サイトなどにアップロードされている動画をダウンロードした時や、動画を編集した時、動画のファイル形式を変換して出力した時などによくみられる現象で、ほとんどの場合、プレイヤーを変えたり時間をおいて再生しなおしたりしても改善することはありません。
録画や編集、変換時に何らかの原因で音ズレが発生しているケースがほとんどですので、動画そのものに問題があるからです。
動画の音ズレは時間的に見ればそれほど大きな差ではありませんが、明らかにずれているとわかるものが多いので、視聴している間に違和感があったり、集中しづらくなったりします。特に長時間の動画や複雑な編集をした場合に音ズレが発生しやすくなりますので、人に渡す場合やアップロードする場合には、きちんと最後まで通してチェックしておいた方が良いでしょう。
動画の音ズレが生じる原因
動画の音ズレが生じる原因はいくつかあります。原因によって補正に最適なソフトも異なりますので、まずはなぜ音ズレが生じたのかを確認してから対処するのがおすすめです。
#映像と音声のコマ数が異なる
複数の動画をつなぎ合わせた場合などによくみられるケースです。それぞれの動画データのコマ数(フレームレート、fps)が異なるため、一律のフレームレートの一つの動画として出力した際に、音ズレが生じることがあります。フレームレートには60 fps、50 fps、30 fps、25 fps、24 fpsなどの複数の種類がありますので、編集する際に一つずつ確認すると音ズレを防ぐことも可能です。
特に多いのが29.97fpsと30fpsの映像データをつなげた場合で、先に進むほどずれがどんどん広がっていきます。
#使用する音声データのサンプリングレートが異なる
録画した映像に音声データの素材を組み合わせた場合、コマ数(サンプリングレート)が異なる音声データを使うことがあります。特に音楽業界では44.1kHzを使うことが多く、映像業界では48kHzをよく使うため、音声データの取得先が異なる場合には注意が必要です。
#撮影する機器や編集等を行うパソコンの処理速度、処理能力に問題がある
スマホなどで簡単に録画できるようになったため、動画の撮影は手軽なものになっています。しかし、端末によってはスペックが不足していたり、インストールしているアプリやバックグラウンドで処理中のアプリが多すぎたりするなどの理由で、機器に負担がかかりすぎて正常な録画ができないことがあります。その結果、録画した動画自体が音ズレの生じたものになっていることも少なくありません。
また、動画を編集したり再生したりする場合も同様です。使用ソフトと推奨環境が合っていない場合や、通信環境に問題がある状態でダウンロード、ストリーミング再生をする場合、メモリの使用量が多く負荷がかかっている場合などは、音ズレが発生しやすいです。
他の端末等で録画や編集、再生を試してみて、問題なく動作するようならば機器類が原因と考えても良いでしょう。
#映像または音声データの一部が破損している
元の映像データや音声データが破損している場合や、出力中のアクシデントなどで映像データ、もしくは音声データの一部が破損することがあります。普通に再生できるので出だしだけチェックした場合には気づきにくいですが、破損した箇所はプレイヤーが認識できないため、その部分を飛ばしてしまいます。その結果、飛ばしたコマ数分それ以降は音ズレが生じた状態になります。
動画の音ズレを補正する方法
音ズレの原因にもよりますが、事前に取り得る対策は立てておくようにしましょう。まず、録画する端末は不要なアプリを閉じて十分なパフォーマンスが発揮できるようにしておきます。動画の編集や変換、再生をする場合にも、メモリを回復したり不要なソフトを終了させておいたりして警戒に動作するよう調整しましょう。ダウンロードする場合には通信環境を整えておくだけでも改善の見込みがあります。
また、いくつか素材を用意して自分で編集する場合には、使用する映像データや音声データが同じフレームレートやサンプリングレートなのか確認し、異なるものがあった場合には編集ソフトなどで統一しておきましょう。
これだけでも、かなり音ズレを防ぐことが可能です。
音ズレしている動画しか手元にない場合には、ソフトを使って音ズレを補正しなければなりません。ソフトによって使い方は様々ですが、データの一部が破損している場合には修復ツールを使い、それ以外の原因で音ズレが生じている場合には映像データと音声データを個別に編集できるソフトを使用します。
ずれている時間を入力するだけで対応できる場合もあれば、サンプリングレートを入力して実際に視聴しながら微調整を手動で行う場合もあります。ボタンをクリックするだけで自動的に映像と音声を同期できるような方法はありませんので、作業自体は単純ですが何度も確認しなおす根気が必要です。
動画音ズレの補正に便利なソフト
音ズレを補正するためには、専用のソフトを用意しなければなりません。有料の物だけでなく、高性能ながら無料で利用できるものもたくさんありますので、使い勝手の良いものを探してみましょう。
#MKVToolNix
対応OS:Windows、macOS、Linux、BSD
MKVToolNixは、主にMatroska(MKV)の作成、編集、分割に使われるオープンソースツールです。AVI、MP4、MPG、MOV、AC3、AAC、M4A、FLAC、MP3、OGGなどの様々なビデオやオーディオ形式形式のインポートをサポートします。また、ファイル連結、チャプター設定、動画の音ズレ補正などの機能も付いています。
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以下は、MKVToolNixで動画のの音ズレを補正する方法です。
- MKVtoolnixをダウンロード・インストールした後起動します。「入力」>「ソースファイル」の枠に動画ファイルをドラッグアンドドロップして追加します。
- 「トラック、チャプタ、タグ」内の「音声」を選択して、「フォーマット詳細オプション」>「ディレイ」の数値を設定して、「MUX開始」をクリックします。
#VLCメディアプレーヤー
対応OS:Windows、macOS、Linux
プレイヤー側の問題で音ズレが生じる場合には、無料で多機能なこちらのソフトを利用すると簡単です。音ズレだけでなく、字幕がずれている場合なども対処できます。ただし、動画そのものを変更するわけではありませんので、他のプレイヤーではやはり音ズレが生じる可能性があります。
また、音ズレがないように調整した設定を保存することはできませんので、再生するたびに毎回調整しなければなりません。
以下は、VLCで動画の音ズレを補正する方法です。
- 音ズレが発生している動画を開いて、トップメニューの「ツール」>「トラックの同期化」を選択します。
2. 「調整とエフェクト」というウインドウが表示されます。「オーディオトラックの同期化」という項目の数値を調整します。
音が遅れている場合は、数値をマイナス方向に調整し、音が早い場合は、数値をプラス方向に調整しましょう。
また、再生している間に、キーボードの「K」を押せば音声が遅くなり、「J」を押せば音声を早くできますので、視聴しながら調整しましょう。
#4Videosoft 動画変換 究極
動画変換のフリーソフトはいくつかありますが、こちらは扱えるファイル形式が豊富ですし、簡単に操作できる動画音ズレ補正機能があります。ソフトを立ち上げてツールボックスに切り替え、「音声同期」を選択して動画を追加しましょう。
プレビュー画面つきでディレイや音量の調整ができますので、実際に再生しながらずれていない状態に調整した後、動画の出力パラメーターや保存先を指定してからエクスポートすれば完了です。
まとめ:違和感のない動画への補正は意外と簡単
このように、動画の音ズレは編集ソフトを使えば素人でもきちんと修正することができますので、ストレスを溜めながら視聴する必要はありません。ソフトによって操作方法に違いはありますが、原因や対処法はいずれも共通しています。パソコン用のツールだけでなく、スマホで補正できるアプリもありますので、使いやすいものを選ぶと良いでしょう。
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